ヤフー株式会社

ご利用サービス:ビジネススキル研修

interviewee:コーポレートグループ コーポレートPD本部 PD企画部 小金 蔵人 様

 

全体最適の視点から
スタンダードを高めていく

人材育成に関する基本的な考え方をお聞かせください。

ヤフーでは2012年に経営体制が大きく刷新されました。本格的に人材育成というテーマに向き合うようになったのは、そのときからです。それ以前は、どちらかというと事業の成長を最優先に走り続けてきて、人の成長は結果的についてくるものという感じでしたが、2012年の経営改革では「人財開発企業になる」という戦略を明確に打ち出しました。それに伴い、「社員の才能と情熱を解き放つ」というコンセプトを掲げ、一人ひとりの力を引き出していくような施策が多数立ち上がりました。毎週30分、上司と部下が1対1で対話する「1on1ミーティング(以下、1on1)」なども、このときに始まったものです。

そうした取り組みが非常にうまくいって、個を尊重する文化が根付き、100以上の多彩なサービスを成長させる原動力となってきました。しかしその一方で、事業観点ではサービスそれぞれが個別最適の方向に向かいすぎた面があるのも事実です。2018年に4月には、6年ぶりに経営執行体制が変更になりました。新体制の下、現在では個別のサービス・事業の連携を深めたり、全社戦略のなかでの位置づけを明確にするなど、より全体最適の視点での改革が進んでいます。

そのなかで、今後目指していく人材育成の方向性や、具体的な取り組みについて教えてください。

ひとつ言えるのは、仕事のスタンダードを上げていきたいということです。そのためには当たり前のことを徹底する「凡事徹底」や、周囲の期待に応える「組織貢献」の観点が重要になってくると考えています。

例えば、以前であれば「爆速」経営を目指すのだから、「なるべく早く」というやり取りが多かったのですが、いつまでにどのレベルまで作り込むのか、社内で共通認識を持って仕事を進めていくことによって、全体のスタンダードが上がっていくはずです。つまり、単に個人の才能と情熱を解き放って終わりではなく、その仕事があるべき姿にかなっているのか、何らかの基準を設けて厳格に判断していく形にしたい。その上で、お互いにフィードバックし合いながら、切磋琢磨していければ理想的ですね。

育成に関しては、例えばロジカルシンキングや課題解決など、一般的にビジネスの基礎スキルとして必要だと言われているものは、しっかりと提供していきたいと考えています。どのレイヤーにいる人は、どのようなスキルをどのレベルで身に着けておくべきかを意識しながら、共通の基準に照らして研修プログラムを回していくことも必要でしょう。

研修プログラムに関して、内製するもの、外部に委託するものとの違いは何でしょうか。また、パートナー企業に求めるものがあれば教えてください。

会社のミッション、ビジョンやDNAに近いものは内製し、世の中ですでに整理されている理論やアプローチがあるものは、外部の知恵や情報を活用するという切り分けをしています。

例えばヤフーのマネジメントの軸になっている「1on1」に関する研修は、自分たちがどういう会社になろうとしているのかに深く関わるものなので、やはり内製する必要があると思います。しかし、いわゆる一般的なマネジメントの原理原則のようなものは外部のコンテンツを導入していくほうが適切でしょう。

パートナー企業に求めるものとしては、まずは大前提として、プロトコルが合っていること。例えば社内のマネジャーにも浸透している「コーチング」や「フィードバック」についていえば、そうした言葉の意味合いや重要性を、いちいち事細かに説明しなくても共通言語として通じる状態であると望ましいですね。その上で、会社の根幹をなすミッション、ビジョンを理解していただいていること。さらに、そのときの会社のフェーズや事業環境に合わせて、柔軟にチューニングしていただければ大変助かります。

人材育成に関して今後の展望をお聞かせください。

「人財開発企業になる」という目標は変わりませんが、人財開発が実際に事業成長に繋がっている会社にしたいですね。具体的な成果として、こうしたイノベーションや、新しいサービスが生まれたんだと明言できるくらいまで、人財開発を効果的なものにしていきたい。つまり、社員のパフォーマンス向上や成長にダイレクトにつながるような設計にしていきたいです。

ただし、常に自戒しているのは、人事はどこまで行っても、社員が自ら成長するためのお手伝いしかできないということです。「人財育成」とか「人財開発」という言葉を気軽に使ってしまいますが、本来人は自分が変わりたいときに変わるもの。のどの渇きと同じで、本人が学びに対する渇望感を持っているときが、最もその内容を吸収できるのです。

その意味で、私たちは研修屋になってはいけない。良い研修を提供することはもちろん大切ですが、学びを喚起するフィードバックをくれる人や、「学びたい」と思える瞬間をいかに仕事経験の中で作っていけるかが非常に重要だと思っています。もちろん私たち人事も変わらなければいけない。私たち自身が学び、変わっていくことによる、組織への影響は決して小さなものではないと考えています。

小金  蔵人様、お忙しいところをどうも有り難うございました。

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