創業者より

創業者 高田貴久について

経歴

  • 大阪府出身、東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業
  • シンガポール国立大学(NUS) Asia Pacific EMBAコース修了
  • Gallup(米)認定 Strengths Coach

職歴

  • アーサー・D・リトル(ジャパン) プロジェクトリーダー、教育担当、採用担当
  • マブチモーター株式会社 社長付 兼 経営企画部付、事業基盤改革推進本部 本部長補佐
  • ボストン・コンサルティング・グループを経て、プレセナ・ストラテジック・パートナーズ設立

設立10年目によせて

2016年2月1日で弊社は設立10周年を迎えることが出来ました。7畳一間のマンション一室で3名で始めた弊社が、現在は50名近い社員を擁し、世界10ヶ国以上・150社以上のお客様に人材育成サービスを手掛けられるようになったのは、ひとえに皆さまのご支援のお陰であると感謝いたしております。

これまでご愛顧して下さったお客様、仲間として頑張ってくれた社員たち、支えてくれた家族や親族、全ての取引先の皆さまに改めて厚く御礼を申し上げます。

私は創業者として、いつも「会社の寿命」について考えています。自ら設立したこのプレセナという会社が、どこまで生き存えるのかを常に考えています。

国税庁の数字によると、会社が10年続く確率は6.3%程度、つまり16社のうち1社しか生き残れません。弊社は運良くここまで生き残っていますが、20年続く確率は0.4%しかなく、さらに生き残るのはそのうちの6%しかありません。30年続く確率は0.021%で、さらにそのうちの5%しか生き残れない計算です。30年生き残れる会社は5000社に1社しかないのです。

弊社は「ビジネススキルの体系化と普及」を掲げ、個人の成長と世の中の発展に貢献したいと真剣に考えています。人の育成は太古の昔から続く終わりのない仕事です。従って我々は、30年やそこらで死に絶える訳にはいきません。50年、100年、もっと生き存え、その時代その時代で必要とされる「ビジネススキル」を提供し続けねばならないと私は考えています。

なぜ、会社は消えていくのか。5000社のうち、4999社は30年以内に姿を消します。それはなぜなのか。

最初からうまくいかなくて倒産する会社が多いのはわかります。弊社も創業1~2年は綱渡り状態が続き、一歩間違えれば倒産という事態が何度もありました。しかし、10年続いた会社の94%が、なぜ20年以内になくなってしまうのか。20年続いた会社の95%が、なぜ30年以内になくなってしまうのか。

なくなってしまうというのは「倒産」とは限らず、どこかと合併するということもありえますが、私は3つほどの可能性があると考えています。1つ目は、変化に対応出来なかったということです。10年目まではある製品やサービスが当たって成長したが、そこから先の10年で世の中が変わってしまい、不振に陥ってしまったというケース。2つ目は、創業者が意図的に会社を手放したということです。会社を手放すには色々な理由がありえますが、不振に陥った以外にも「飽きた」「やる気を無くした」「他にやりたいことが出てきた」など個人的な事情もあるでしょう。3つ目は、次世代への引き継ぎがうまくいかなかったということです。創業者がずっと引っ張ってきたけれど後継ぎが育たず、やむなく他社に売却するというケースです。

弊社がこの状況に陥り、消えてなくなってしまうことはないか?私は常に自問自答し続けています。

まず1つ目の「変化への対応」について。この10年間、弊社はロジカルシンキングや問題解決といった思考系スキルを中心に成長してきました。日本語という言語が残念ながら論理的に出来ていないため、ここから先の10年もロジカルシンキングや問題解決へのニーズが無くなることはないでしょう。

しかしコンテンツは広まれば広まるほど着実にコモディティ化します。「ビジネススキルの体系化と普及」を会社のビジョンに掲げていることは実は矛盾しており、ビジョンを実現して我々のコンテンツを広めれば広めるほど、我々のユニークネスはなくなっていくのです。

つまり、弊社は進み続けねばならない。同じコンテンツを同じように教え続ける会社では、いつかはコモディティ化して存在価値がなくなってしまうという、自己矛盾の中に我々は存在しています。その時代その時代にあったコンテンツを開発し、それを世の中に広めていくことこそが、我々の存在意義なのです。

これから世の中は着実にもっとグローバル化していくでしょう。もっとIT化していくでしょう。目先の数年間を考えれば、今のビジネスでもやっていくことが出来ますが、さらに10年後、20年後に我々が存続し、世の中に価値を提供し続けるためには、グローバル化とIT化に舵を切ることは避けては通れません。

次に2つ目の「創業者が飽きる」について。恐らく「起業家」という人種は、新しいことにチャレンジするのが大好きです。ルールのない世界で、新しいことに取り組み、これまでに無かった価値を創出していくことに喜びを覚える。リスクを恐れず、むしろ楽しんで回避しながら、突き進んでいくことに喜びを感じます。本を読まない私ですが、起業家の伝記に限っては色々と読みました。しかしだいたい、皆同じです。変化が好き、チャレンジが好き。逆に言えばルーチンが嫌いで、組織立った仕事が苦手。だから会社を飛び出して起業する訳です。

しかし、会社は大きくなればなるほど、ルーチンワークになってきます。ルーチンが回るから会社になる訳で、当たり前といえば当たり前なのですが、これも起業家が抱える大きな自己矛盾であると私は感じています。私自身もある時、ふと感じたことがあります。自分が作った会社なのに、いつの間にか会社が自分を制約し始めている、と。

会社が大きくなれば大きくなるほど、起業家は窮屈に感じてきます。それまで思い通りに出来たことが、思い通りに出来なくなる。安定的な事業運営を行うには、ルーチンを回す必要も出てくる。組織で仕事をしてルーチンを回す人種は当然、起業家とは異なる人種です。

かくして、創業者は孤立していく。そして、次なる刺激を求めて、社外に飛び出す。自分の周りで起業した人たちを見ても、10年ぐらい経って会社が安定してきた所で、外に飛び出している人がとても多い。

では、弊社はどうなのか?実際に50人の会社になれば、立派な「組織」となっています。ルーチンはルーチンで回っているし、好き勝手なことは出来ず、確かにそれは窮屈だと感じることもある。

しかし先述の通り、我々は50年後、100年後の未来に向けて、さらに進み続けねばなりません。つまり弊社から「フロンティア」が無くなることはない。実際に現在、創業メンバーたちは次なるフロンティアを求め、海外事業の立ち上げ、IT化の推進など、新たなチャレンジを続けています。

逆に言えば、創業メンバーというのは、組織が窮屈だから飛び出した人種な訳で、そもそも組織立って仕事をするのに向いていないと私は感じています。組織立ってから入社してきた、組織人として働ける人の方が、よっぽど組織の運営が上手い。有名なシスコの話ではないですが、10億までの会社を作る人、100億までの会社を作る人、1000億までの会社を作る人は、全て別の人物であっても良いと私は思っています。

3つ目の「次世代への引き継ぎ」は、ほぼ2つ目と同じ話だと考えています。つまり、「組織立った仕事に向かない創業者たち」が、いつまでも会社を引っ張り続けていると、確かに会社は大きくなるかもしれないが、いつまで経っても組織立ってこない訳です。よくある「ワンマン社長」というパターンで、そのワンマン社長が引退したタイミングで、後継者がいなくてその会社はお終いとなってしまいます。

経営の本質は、創業者や社長、役員なども含めて「臨機応変」に「適材適所」であると私は考えています。立ち上げに向く人間は、立ち上げをやればよい。組織立った運営に向く人間は、組織立った運営をやればよい。「創業者が会社を引っ張り続ける」ことが、必ずしも健全ではないし、必ずしも会社の発展につながる訳ではないと私は考えています。

弊社は「第何期プレセナ内閣」という呼称で、2年ごとに経営陣を刷新しています。「立ち上げ」をやるフェーズは、立ち上げに向いた人間が経営をする。2006年~2008年の創業期、2013年の海外展開・IT展開本格化にあたっては、創業メンバーが会社を経営してきました。2009年~2012年の拡大期、そして2014年以降の海外・IT展開の定着期にあたっては、組織仕事が得意な現行経営陣が当社を経営しています。時々の状況にあった経営陣で、分担して経営をしていくことこそが、「次世代への引き継ぎ」といった課題を解決する方法であると考えているのです。

「ビジネススキルの体系化と普及」は、終わりのないテーマです。死ぬまで追求出来るテーマを見つけることが出来て、自分は本当にラッキーだったと感じています。またそれを、このプレセナという会社のメンバーたちと、臨機応変にタッグを組みながら追求出来ていることに、大きな喜びを感じています。

20年後にも、30年後にも、100年後にも、世の中から必要とされる存在であり続けるために。これからも私たちは努力して参ります。今後ともご愛顧のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。